【かつてのAppleのクリエイティブ・ディレクター】
ケン・シーガルさんと聞いても分かる人はそう多くないかもしれません。
かくいう私も、聞いたことがあるなくらいでした。
だけど、このWIREDの記事を読んだら、その名は確実にインプットされました。
かの”Think Different”キャンペーンの中心人物の一人にしてクリエイティブ・ディレクター。
ジョブズ復帰に際して、展開されたThink Differentキャンペーンは何となく目にしていただけでしたが、Mac製品(=当時はほぼイコールでApple)は知的で格好よくて、変革をもたらすものなんだなとぼんやり思ったものです。
記事にもありますが、秀逸なクリエイティブだと思います。
Appleがその要素を内包していなければ出来ない話ではありますが、その先には変革や進化をイメージさせているからです。
あの前フリがあってこその、iMacの大ヒットだったとも思いますし。
【そんな彼が批判したこと】
彼が言っていることは単純。
iPhoneの「非S」と「S」の製品展開は複雑だというのです。
思わず膝を叩きました。
昨今のAppleの製品展開の仕方をみていてスッキリしなかった理由が、この記事で気付かされたのでした。
同じことが他のプロダクトについても言えるんですよね。
iPhoneにSを付けたのはジョブズ存命の頃からでもありましたが、今の展開と明確な違いがあります。
iPhoneにしてもジョブズが3GSの「S」に込めたものは、今の順番通りにプロダクトの目新しさと陳腐化の言い訳のためのSとはちょっと違うような気もしますし。
以前のAppleは多い選択肢を提示するのではなく、出し手が正しいと信じるものを提示していました。
そして結果的に受け容れられていた。
一方で、選択肢の多さは差異と区別を生み出すんですよね・・。
iPhoneどころかiPadしかり、(一時的でしょうが)MacBookのラインナップしかり。Apple Watchに至っては、全アイテムをスラスラ言える人もなかなかいないのでは。
【実は主体的に作って世に出すのは難しいことだと思う】
この人が命名したといわれるiMacなんて、作り手の気持ちというのか世に送り出す喜びみたいなものが、強く感じられました。
うまい喩えが浮かびませんが、自動車でいえば初代のマツダ・ロードスターのような、企画段階からのワクワク感が伝わるような商品が近いような。
買い手に選ばせるのでなく、出す側が作り出す過程で選び作り上げるのが本筋。
だけど、自分が作り手の立場のときもあるのでわかりますが 、実はそれって難しいんですよね。
主体的に自分のものや考えを世に出すなんて、実は恐ろしいことであり勇気がいることなのです。
Thin Differentに出されてた人たちは、そのあたりをクリアしていたっていう暗喩も入っていたり。
彼らにあったのは差異や区別ではなく、ときにエゴや独善をも呑み込むくらい濁りのない正しさ。
それらと比べたら、遺憾ながら殆どのメーカーやクリエイターは、単なる生産者ですもんね。
重ねて遺憾ながら、買い手や受取り手に選択を委ねているという点において。